菌ちゃん農法で野菜が育つ理由を解説!【移住者がテレワークしながら起農した件#29補足】

こんにちは!那須に移住して5年目に突入し、農業にチャレンジ中のAOです。
前回の『移住テレ農#29』記事で、菌ちゃん農法にチャレンジし始めていることをシェアしました。
この記事では、そもそも野菜が育つ仕組みや、その上でなぜ菌ちゃん農法が有効なのかを説明していきたいと思います。
大規模プロ農家には向かない手法ですが、家庭菜園や小規模生産者にはピッタリの農法ですよ♪

シンプルなようで奥が深いから面白い!
菌ちゃん農法の基本「菌とは?」
菌ちゃん農法における主役は菌です。
菌とは「肉眼では見えない微生物」のざっくりとした総称で、細菌、カビ、酵母など、色んな微生物たちが含まれています。
いずれも生態系にとって欠かせない存在ですが、我々人類にとっても、とてもありがたい存在でもあります。
- お腹の調子を整えてくれる腸内細菌など
- 日本の食卓には欠かせない納豆菌や麹菌、酵母菌など



いうまでもなく納豆や味噌醤油、お酒とかに欠かせない菌たちだね
ご存じの通り、悪い菌=人間に害をもたらす菌も、たくさん存在しています。
- 食中毒を起こすサルモネラとか黄色ブドウ球菌など
- 肺炎球菌など病気の原因となる菌など
なんであれ、菌とは、それぞれの役割に沿って「何かを分解する」存在です。



人間にとって都合が良い分解をするかしないかで「良い菌」「悪い菌」とに区別されてるよ
一般的な慣行栽培と菌ちゃん農法の違い
土中の菌は枯れ葉や動物のフン、動物の死骸などを分解して土に返してくれています。
植物は、この分解によって生まれた栄養を吸うことで大きく成長するんです。
これが植物が育つ仕組みの基本のキなので、慣行農法であっても菌の力は欠かせません。



菌ちゃんの力なくして植物の成長はない!
では菌ちゃん農法と他農法の違いは何かというと、「良い菌の量」と「悪い菌との戦い方」です。
(そもそも)植物が育つために必要なもの
植物が成長するには、以下の3つが欠かせません。
光合成に必要。葉っぱが光を受け、二酸化炭素と水からデンプンや糖を作る。(菌は関与しない)
根から吸収され、栄養分を運んだり、蒸散によって温度調整を行う。土中の菌が土に隙間を作って、根が水を吸いやすいようにしてくれる。
野菜の成長や代謝に必要な窒素・リン・カリウムなどの必須ミネラルを土から吸収。この必須ミネラルは菌が有機物を分解して作ったもの。



菌ちゃん活躍してるね♪
いわずもがなですが、野菜や米ムギなどの穀物も植物なので、この仕組みで成り立っています。
一般的な慣行農法の強み弱み
慣行農法の目的が
- 人口を支えるための大量生産
- 天候に左右されず安定的に食を供給
- 誰もが手に入れられるよう価格を抑える
なので、化成肥料を植物(=米や野菜)に与え、直接的に必要な栄養を供給します。
なぜならば、化成肥料は安く大量に作れるし、菌による分解を待たなくて良いので即効性があるし、特定の栄養素をピンポイントで狙い撃ちするなどコントロールしやすいから。
また、悪い虫や菌から植物を確実に守るために、早め早めの予防対策として薬を用いたり、症状が出てしまった場合には対処療法的に薬でケアしたりします。



人間の力の及ぶ範囲で自然と戦って、できる限り植物の生育を効率的にコントロールしようという発想だよ
ただし、慣行農法には弱点もあります。
化学のパワーに頼る分、「悪い菌の数が増えない代わりに良い菌の数も増やせない」という点です。



悪い奴を増やさないために、良い奴も増やさない(増やせない)というトレードオフの関係だよ
ですが化成肥料は人間で言うとビタミン剤やサプリメントみたいなものなので、それだけでは健康でいられないですよね。
また、頭痛薬だろうが胃腸薬だろうが、「薬は飲みすぎると逆に良くない」「どんな薬にも副作用がある」ということはお医者さんから教わりますよね。
そんな感じで、長く慣行農法を続けたことによって、田畑そのものだけでなく、周辺の環境にも悪影響が出てしまっているんです。



他にも慣行農法の弱点はあるのですが、是非について論じ始めると長くなりすぎるのでまた別の機会に!
そこで、慣行農法の弱点を補う農法として期待されている手法のの1つが「菌ちゃん農法」です。
- 外から栄養を与えるのがよくないなら、与えなければいいじゃないか!
- 薬をまくのが良くないなら、薬が必要のない強い植物を育てればいいじゃないか!
ざっくり言うと、そういう発想の違いがあります。
さらに詳しく紹介しますね。
自然にあるものをフル活用!菌ちゃん農法の基本
慣行農法においては、植物が必要とする栄養や外敵から身を守る術を肥料・農薬といった形で外から与えていました。
ですが菌ちゃん農法においては、元々畑にいる菌を増やして、大いに活躍してもらうことで畑の中の生態系そのものを整えるという考え方をします。
「人の手によって植物を育てる」というよりも、「植物自身で必要な栄養を吸収し、虫や病気などの外敵から身を守る強さを獲得できる環境を人が作る」という発想の転換です。



環境が整えば野菜は勝手に育つ♪
野菜が必要な栄養素はどこから来るのか?
野菜が必要とする栄養素がどこから来るのかと言うと、菌ちゃんたちによって作られます。
「肥料を与えないで植物が育つわけないだろ!」
「私も家庭菜園やってるから分かるけど!肥料入れないで野菜育てようとしたけど全然ダメだったぞ!」



私も最初はそう思ったよ
ポイントは、菌が増える仕組みです。
菌は有機物を分解したい子たちなので、有機物をたくさん用意してあげるのです。



菌ちゃんが好きな有機物とはつまり枯れた草や葉っぱや木のことだよ
菌ちゃん農法で、植物が病気や虫に強く育つステップは⬇️の流れです。
畑に刈草や丸太などを入れることで、「菌ちゃんのエサ」を補う。
(分解を必要としている物で菌ちゃんを誘致する)
土壌中の菌(分解菌・共生菌)がエサ=有機物を分解し、野菜が吸収できるミネラルやアミノ酸を作り出す。
菌が増えることで、土の団粒構造(ふかふかの状態)が形成され、水はけ・保水性・通気性が向上。
「共生菌」が根のまわりで活躍し、野菜が欲しいミネラルを運ぶ。良い菌が多数派になることで、悪い菌が来づらくなったり、来てしまっても追い出せたりする。
良い菌が多い環境で育つ野菜はバランスの取れた栄養を自力で吸収するため、病害虫への抵抗力が高まる。



仕組みが分かると「なるほどねー」って感じじゃない?
有機農法と菌ちゃん農法の違い
有機物を畑に入れるわけなので、大別すると菌ちゃん農法も有機農法の1つに入ります。
ただし有機農法では、有機肥料を畑に入れます。
人が意図的に作物の生育を促進するために栄養を増し増しにした「肥料」であるという点や、この「肥料」は「作物に与える」という目的で入れているという点で、考え方に違いがあります。



もちろん有機肥料も菌が分解してくれないと植物が吸えないんだけど、思想のイメージで言うとこんな感じ
また、有機農法においては、有機認可のある農薬も使用可能ですが、菌ちゃん農法では農薬は用いない前提です。
これらが、菌ちゃん農法が従来の有機農法と一線を画すポイントになっています。
「虫が付く野菜は美味しい」はウソ!
ところで皆さま。
いつからともなく、誰からともなく、「野菜に虫がつくのは美味しい証拠なんだよ!」って教わりませんでした?
実はあれ、ウソなんですって!
「栄養バランスが崩れてる」「根っこが弱くて栄養をちゃんと吸えてない」そんな弱い野菜だから虫が付くんですって!



「なんですとー!?」って驚いたでしょ?
化成肥料は栄養バランスが偏りやすいという弱点があるので、化成肥料で育った野菜は葉っぱや実などの細胞がスカスカで柔らかくなって虫たちが食べやすいんです。
何らかのストレスで苦しんでる野菜達も免疫力が落ちてしまっているので虫の標的になりやすい。
ですが、ちゃんと良い環境で強く育ってる植物はミネラルが豊富で細胞もしっかりしているので、虫たちには固くて食べづらい。
しかもそんな野菜たちは、自分を守るための物質”ファイトケミカル”が豊富で、これには虫が忌避する効果が含まれています。
つまり菌ちゃん農法だと「人間にとっては美味しい野菜だけど、虫にとっては苦手な野菜」が作れる、というわけ。



健康オタクなら「ポリフェノールとかリコピンとかのファイトケミカルが体に良い」って聞いたことあるハズ!
イメージしやすいのは、ポイ捨てされた食べ物の残りやゴミ箱に虫がたかってくる現象かな。
冷蔵庫の奥で忘れられてカビが付いてしまった食品とかも同様。
そもそも自然界において、虫さんや菌ちゃんたちは弱っている植物や病気の植物を片付ける(=分解する)お掃除屋さん的な役割を担っています。
植物も残飯も同じようなもので、虫さん的には「弱い子は早く土に還してあげなきゃー!」って行動原理が働くんですって。



虫さんは弱い子がどの子か教えてくれる”お医者さん”とも言える存在かもね
なんか宗教っぽい?菌ちゃん農法のデメリット
なんか良いことばっかり言ってるけど、菌ちゃん農法にはデメリットもあります。
少なくとも多くのプロ農家がこの農法を採用して、慣行農法にとって代わるには、色々と課題が多いです。
① 野菜が育つのに時間がかかる
化成肥料を使うと「ドカン!」と栄養が効くので、野菜が早く大きくなります。
ですが菌ちゃん農法は、菌がゆっくり分解して必要な分だけ栄養を供給するので、成長もゆっくり。
「早く!大量に!」という現代型の生産には向きません。



一方で、化成肥料だと「中身は子どもだけど外見は大人」みたいな野菜になっちゃうから食味が落ちるという課題もあるんだけどね…
② 最初の土作りに時間がかかる
土の中に菌ちゃんを増やして土を豊かにするには、数ヶ月かかります。
本当に安定して菌ちゃん野菜が採れるまでには、数年かかることもあるんだそう。
最初から「農業に適したふかふかの土」にはならないので、気長に環境を育てる心構えが求められます。



プロ農家にもせっかち現代人にも向かないよね
③ 天気や環境の影響を受けやすい
雨が多すぎると菌ちゃんが流れてしまうこともあるし、
気温が低すぎると、菌ちゃんの活動が鈍くなり、分解が進まないこともあります。
菌ちゃん=自然に頼る部分が多いのでコントロールが難しいし、生産者がその畑ごとに合った方法で工夫をする必要があるんです。
ある程度の手順化はされているものの、工場でのライン生産的な栽培は難しいです。



慣行農法みたいに化学というチート技が使えない分、より難しいよね
④ 手間がかかる
菌ちゃん農法では、草や木の枝などの菌ちゃんのエサを定期的に投入したり、土の様子をよく観察しながら、菌ちゃんを育てるためのお世話が必要です。
しかも畝立てから収穫まで、機械ではできない作業も多いので、人間の手で行う必要があります。
機械化&ルーティーン化された慣行農法に比べると、人の手(目)による管理の手間がかかるんです。



まぁどんな農法でも手間がかかる仕事ではあるんだけどね
⑤ すぐに結果が出にくい
菌ちゃん農法は、慣行農法みたいに結果がすぐに出ません。
化学肥料なら「肥料をまいたらすぐに大きくなった!」「薬をまいたら虫が消えた!」が目に見えるのですが、菌ちゃん農法はじわじわ結果が出るので、「本当にうまくいってる?」と不安になりがち。
忍耐力が必要です。



私ぐらい大雑把でテキトーな人間には向いてるんだけどね
⑥ 大量生産には向きにくい
自然に任せるという性質上、スーパーに並ぶような、見た目がきれいで同じサイズの野菜を大量に作るのは難しいです。
特にJAとかどこかに卸すとなると、規格にハマらないものは商品として売れなくなってしまうので、プロ農家からしたら死活問題になります。
これは「見た目がきれいな野菜じゃなきゃ嫌!」となっている消費者のマインドも変わらないと、業者も変えられない。
でも業者からも「変えましょう」と発信してくれないと、消費者のマインドも変わらない。
すぐには解決しない問題でしょう…。



個人で食べるだけなら見た目なんかより美味しいほうが全然うれしいけど、商売となるとねぇ…
⑦なんか宗教っぽい
菌ちゃん農法って、そのネーミングからしても「なんか宗教っぽい」と感じる人も多いようで😅
結論から言うと、妙な教義があったり、高額お布施を要求されたり、怪しいミサに参加させられたり、勧誘を強要されたり、
そんなことは一切ないので宗教ではないです!笑



書籍や講習の費用は1万円ぐらい払ったけどwww
まぁ、菌ちゃん農法の提唱者の吉田俊道氏も、
「菌ちゃんに感謝を口に出して伝えよう」
「今まで菌ちゃんをないがしろにしてゴメンネって謝ろう」
のような発言もしているので、たしかに外野から見るとヤバそうかも!?



熱心なファンも多いから余計に宗教っぽさが出てるかも
実は菌ちゃん農法はここ数年の間に吉田氏が提唱しはじめた手法なのですが、
もう何十年も昔から「畑に肥料なんか不要」「人間が手を入れるな」みたいな自然農法を提唱する人たちは数多くいて、実際に自然農法の第一人者とされる人として世界救世教という宗教の創始者・岡田茂吉が今でも支持を集めています。
この宗教の教義の1つが自然農法なのですが、他にも教義の中には「手をかざすと悪い霊が浄化される」みたいな信仰もあるようで、、、
それを置いておいても、自然農法に関する彼らの説明を聞いてると、ちゃんと(?)宗教的です。
「自然と調和せよ尊重せよ」とか、中には「石油は悪」みたいな極論もあって、「???」となる矛盾も感じます。



矛盾をスルーできるかどうかが宗教の境目だよね
私から言わせると、そんな自然農法の中でも菌ちゃん農法は、かなり理論的な説明がしっかりしています。
さきほどから私も説明している、菌が有機物を分解して栄養を作ったり土をフカフカにしたりする仕組みとか、植物の持つファイトケミカルなど、これらは一般教養的な生物学や医学でも語られてる話だから。



ググってみてもらえれば科学的に正しいこと言ってるってことがすぐに分かるよ!
吉田氏は、石油製品=マルチ等を活用することや、初期の段階では補助的に液肥を用いることなど、現代人が農業と向き合う上で現実的な解も示しています。
もちろん科学的な根拠を持って推奨しているので、こういう脳みその柔らかさも、宗教にはない現実主義的な発想でしょう。



柔軟性に欠けるのが宗教の常だからね…
そもそも私の感覚では、「すべての化成肥料・化学農薬が悪!」みたいな過度な慣行農法アンチも宗教レベルの熱を持っていて怖いです…。
副作用的な部分ばかりをクローズアップして叩いてる人たち、みんな毎日何食ってんだろ?て不思議でしょうがない。



何派の人にせよ暑苦しい人たちとは関わらないに越したことはないよね
まぁ何にせよ、菌ちゃん農法はまだまだ認知度が低いので、「周りに説明しづらい」「理解を得られない」「誤解を生みやすい」という意味で、色んな人が簡単に採用しやすい農法ではないという現状があります。
菌ちゃん農法まとめ
長くなってしまいましたが、「私が実践するならコレだ!」と思った菌ちゃん農法について紹介してきました。
まとめると、⬇️のようになります。
菌ちゃん農法 | 慣行農法 | |
---|---|---|
肥料 | 菌ちゃんにエサ(葉っぱや木などの有機物) | 作物に化成肥料を |
栄養バランス | バランスgood | 偏りがち(特に窒素過多) |
野菜の細胞 | 丈夫で硬い | 柔らかくて虫が好む |
虫・病気 | 丈夫で硬い | 虫が来やすく病気になりやすい |



これが虫は避けるが人間が好む野菜が作れる仕組みだよ♪
もしよかったら、この仕組みを踏まえたうえで前回の記事で紹介した試験栽培の様子を見直してみてくださいね。


1回目ということで、菌ちゃんの数がまだまだ少なく、いくらか虫がついていました。
でも、大きさや味は申し分なく、感動しました♪
今年は本格的に菌ちゃん畝を増やして、さらに実践していきますので、その様子も引き続きシェアしていきますねー😁
引き続き、ゆるっと挑戦する様子を応援していただけると幸いです♪
お気軽にコメントください♪